Yok Osaka

大阪市立大学建築学科 横山俊祐研究室の雑記です。研究室での現在の活動の様子について報告を逐次行っていきます。

2012年8月9日木曜日

#97 一期一会


東日本大震災が起こってから、早いことに一年以上の月日が経ちました。
世間から、少しずつ震災の記憶が薄れていっているように感じます。
今回、東北に一か月滞在した私が見てきた、
東北のと、感じたことを、ここに伝えたいと思います。





この写真は、今回私が滞在した中で、最大のイベントであった流しそうめんの風景です。
こんなにたくさんの人が参加し、隣の人とお喋りする姿。
そして、何の違和感もなく、住民の人に交じっている私。
ここに来た当初、この風景を思い描くことはできませんでした。

外部から来た人間=被災していない人間という
厳しい視線を感じる毎日から始まりました。
被災した自分たちの心なんてわかるわけないという気持ちと、
簡単に心の内を理解されてたまるかという気持ちがあったのだと思います。

それでも毎日通い続けたこの団地には、今となっては
深い思い入れと、居場所があるように感じます。
それほど、最後にはこの団地の仲間であると感じられたから。

この旅で最も感じたこと。
それは人の気持ちです。
人間には本性があることを肌で感じる場面が数多くありました。
他人に対する疑心暗鬼。
それと同時に、人の温かさも。
人間は様々な人に支えられて生きているということを知りました。



ひとりぼっちと感じながら毎日通い続けた道。
大きな挨拶の声と、最高の笑顔だけは忘れないように。
少しずつ、「おはよう」の声が返ってきて、
少しずつ皆さんの輪に入っていったという過程があります。
熱意は伝わるもの。そう強く感じます。

そして、この過程は皆様の心に少しでも寄り添って
話を聞かせていただくために必ず必要だったということ。
今になってみて、この過程の大切さを改めて感じることと、
住民の方とこのような関係が築けた理由が
何となく、わかるような気がします。


ここに居る人たちは、周りの人に支えられて、支えてという関係が、
知らず知らずのうちに成り立って生きていることを、
誰よりも感じていたはずだから。


そして、被災したという同じ思いと、同じ経験を持った仲間が、
近くにいるというのは、これほど大きな力を持つということ。


私も皆さんに受け入れられて支えられて。
笑顔と毎日変わらない明るい心で皆様と接することで、
少しだけ温かさを届けて、
新しい風を外部から来た私が少しだけ吹かせて。
被災していない私がいくら被災者の方の気持ちをわかろうと思っても、
絶対に理解しきれないという現実があったとしても、
どうにかして同じ目線で、今の生活を見たいという気持ちを持っていたこと。

少しだけ、同じような感覚が生まれたのではないでしょうか。

「今回の震災で一番分かったこと。人の気持ちが本当に心に沁みわたる程わかりました。」
これは私が最も印象に残っている住民の方の言葉です。
あれだけ様々な経験をされているのに、
最後に住民の人が口をそろえて、選んで出てきた言葉のほとんどがこの一言。
その重みが今は、身をもって感じられます。



少しずつ自分自身で築いてきたものが、目に見える様になって、
最後にあれだけ多くの住民の方の笑顔を見ることができ、
たくさんの「ありがとう」という言葉と気持ちをいただきました。

生まれも育ちも全く違った環境で、ゼロから新しい関係をつくっている感覚。
人生の濃縮版をこの一か月で見ていた様な感覚でした。


そして、もうひとつとても印象に残っていることがあります。
被災した地を巡る中で、はっとさせられることがありました。
「がれき=被災された方の大切な大切な財産や思い出」


私自身このような視点で見たのは、この時が初めてです。
がれきの処理や受け入れの話がニュースで言われていますが
がれきという言葉自体を使うことに、何も悪いことはありません。
しかし以前とは違って、がれきとなる前の姿があったことを
忘れてはいけないということを強く意識するようになりました。

こんな風に、以前とはまた違った見方で今回の震災を捉えることもあります。


私が大阪に帰ってきても、被災された皆様は昨日と変わらない毎日を送っていて、
何もかも失った厳しい現実がそこにあることに変わりはありません。
このブログを読んでいただいている皆様の心に、
少しでもはっとさせられる気持ちが、ほんの一瞬でもあれば幸いです。
そうした、ほんの少しの気持ちを持っていただけることが、どれほど大きな意味を持つか。


被災者の方は、同情の気持ちを求めているのではありません。
手を差し伸べてくれることを待っているのではありません。
数多くの支援に対して、感謝の気持ちは、
言葉に表せないほど抱かれていますが
この世界で被災した自分たちだけが、
多くの人から忘れ去られて、
取り残されていくのが悲しく、虚しく、怖い。
傷ついていない周りの世界があって、
でも、自分たちは何もかも失って、
傷ついた心も持ちながらのマイナスからの再出発。
それでも生きていかなければいけないという厳しさが確かに存在します。

今回の旅で私が一番心に強く感じてきたこと。
そして、メディアからはなかなか伝えきれない思い。
だからこそ、この場を借りて記憶に留めておきたいと思います。
そして、多くの人の心にも留めていただけたらと思います。

「いつまでも甘いことは言ってられない。厳しい言葉かもしれないけれど、
これから自分たちの足で立ち上がって復興という大きな取り組みがあるのだから。」
このような強い思いで、この団地の会長さんは毎日を過ごしています。








そして最後に、この子供たちの笑顔は、
どんな時でも、周囲の人の心を和ませてくれる、
勇気付けてくれる物凄い力を持っています。
この団地にたくさん植えられていたひまわりの様な満面の笑みに、
私自身何度も救われました。


ただひたすらに力強く、
上へ上へと太陽に向かって真っすぐに伸びていく様に、
嬉しさや寂しさや楽しさといった素直な気持ちを表現しながら

未来に向かって。


一年後、十年後この子供たちが大人になった時に、
東北に今とは変わった風景が見られることを祈っております。



この東北への旅で関わって頂いたすべての人に感謝しております。
一期一会

saya

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